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脳log[20110419] 言葉の選び方が合わない。



2011年04月19日 (火)

最終更新: 2011-07-30T13:35+0900

[] 言葉の選び方が合わない

難癖をつけようとてぐすねを引いてるわけじゃないのに、1ページ目、2ページ目、3ページ目と下のようにつまずいてばかりでさっぱり話が進まない。

百人の町がありました。

町の人は、十人が大悪人で、三十人が善人のふりをした極悪人で、五十七人が自分のことを善人だと思い込んだ悪人で、三人が善人です。

善人の一人は、(省略)

もう一人の善人は、(省略)

最後の一人の善人は、最初から何もしませんでした。前の二人が失敗したのを見ていて、何をしても駄目なのだと思いました。彼は家の中に閉じこもって、人の声を聞かず、人の目から逃れて、ただただ町の未来を儚みました。

(省略)

悪行や善行はあっても、「悪人」や「善人」はどうだろう。悪行ばかりを行う人を悪人と呼んでみても、「善人のふりをした極悪人」や「自分のことを善人だと思い込んだ悪人」は何をもって悪人とされているのだろう。「最初から何もしませんでした」という「善人」を善人たらしめているものは何?ここで区別されているような種類の人間が存在しうる?ただの言葉遊びでなくディテールをもって。

1

エレベーターを出ると床がなかった。

遙か八百メートル足下の遠い区街は、しかし一立方センチメートル辺り指の数ほどの煤煙もカビ胞子もない大気を透してシャープネスを施され、異様なリアルさで陽平の眼底に不躾に飛び込んでくる。そこに住み暮らす六万五千の人間男性と八万超の人間以外の人いきれが服に髪に染みついてくるようにすら思えた。

「シャープネスを施」す。何が言いたいのかはわかる。「シャープネス」は画像のエッヂを強調してノイズを増すフィルタのことなんだろう。でも sharpnessは特定の価値方向性を持たない中立の単語だと思ってるので、結果がどちらに倒れるのか推測はできても理解したくない。

「リアル」。微粒子をほとんど含まず、建物の輪郭が強調されたようにはっきり見える澄んだ空気。この描写は「住み暮らす六万五千の人間男性と八万超の人間以外の人いきれが服に髪に染みついてくる」ようなリアルとは対立するように感じる。大気の存在を感じさせない景色は CGのような作り物臭さを喚起しそうだ。

口の端から頬にかけて指でなぞるような仕草をしてみせると、後輩は青ざめた顔を押さえていた手でようやく防臭マスクを顔にかけた。臭いだけでこの様では、もし遺体が収容済みでなかったら、この若者は入室早々に床を汚していただろう。

特定の場所を指示せず、たんに収容するというとき、自分は内へ取り込む動作をイメージする。だもんで、遺体が収容されている「から」悪臭+グロ映像のコンボを避けられて吐かずに済んだ、という部分で接続が順逆ひっくりかえってるような混乱を覚えた(その場所に収容されているからこそコンボを食らうんじゃないの?)。「収容」という一語のみを手がかりに何を言ってるんだと思われるかもしれないが、ここは話の冒頭なので二人のいる場所がモルグだという可能性だって残しながら状況の把握につとめていたわけだ。